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遺伝子

以前にも書いた事があるが、私の子供の頃の記憶の楽しい思い出の中には父の姿が無い。
今でこそ、入学式や卒業式に夫婦揃って出席する姿が多く見られ、学校の行事でも父親の活躍が当たり前のように見られる様になったが、団塊の世代と呼ばれる父の世代は父親は仕事優先。
家庭サービスは二の次…というのは我が家だけではなかったと思う。
昔のホームドラマでは、子供がトラブルを起すと父親が母親に向かって言うセリフは決まっていた。
「俺は仕事!家庭を守るのは母親の仕事だろ!!」ってな具合に。
我が家でも母が父に言われていたのだろうか?
「○○は(私)が勉強しないのはおまえの責任だ」とか。
特に仕事優先の父だったので、楽しそうに笑っている家族写真など記憶に無い。
どこかに連れてもらった事が無いのだから当然と言えば当然。
父は、私の子供の頃の記憶に、楽しい思い出を1つも遺してくれなかった。
そんな父も、私の息子が生まれてから変わった。
母の教育もあるが、とにかく孫、孫、孫…で、会社でも特に厳しかった父が孫の事になると別人だった、と亡くなった後に会社の人に聞かされた。
私の子供の頃とは違い、息子が生まれてからはとにかく色んなところへ出掛けた。
年に2,3回は旅行にも行った。
写真もたくさん撮った。
どの写真も、赤ちゃんの頃の息子は父に抱かれ、少し大きくなってからは父の手にはいつも息子の手が繋がれている。
私の子供の頃には決して見る事の出来なかった、満面の笑顔の父がいる。
最近気付いた事がある。
幼児体型から少年に向かって成長する息子の体型が、びっくりする程父に似て来た事だ。
中肉中背の父だったが、手足の骨だけはとてもごっつく、それは外からも見てとれた。
息子の体型もそのとおりで、小さいお尻や細い上半身の割に手足の骨ががっしりしている。
息子の顔は夫の母から、「向こう(私)のおじいちゃまにそっくりね」と言われてきたのだが、こんなところまで似て来るとは…。
遺伝子のなせるわざだ。
ちなみに、大きくグローブのようにそれはそれは大きくて、ペンだこがさらに目立っていた父の手と、絵を描くのが好きで家にいる間はほとんどペンを握っている息子の手も、ミニチュアの様にそっくりである。
思い出の1つも遺してくれなかった父が、唯一遺してくれたものだ。

もうすぐ桜の季節、父との最後の約束になった桜のお花見の季節がやってくる。
この季節になると父の事が書きたくなる。

[2006-03-11 10:40]

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