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救世主

それはあまりにも突然。
ゴールデンウイーク明けの朝の事。
4月に小学校に入学した娘が「今日は学校お休みする」と言う。
「どうして?と聞くと、給食が美味しくないの…残しちゃいけないんだよ」とポツリ。
「でもね、幼稚園と違って学校は簡単にお休みしちゃいけないんだよ」
目でも訴える娘の手を引っ張って、強引に玄関の外へ押し出した。ランドセル

翌朝、「お腹が痛くて給食が食べられないから、学校お休みする」。
今度はランドセルを背負ったまま、ガンとして玄関から動かない。
「遅れる!」とせかす息子を先に行かせ学校の昇降口まで送ったが、
娘はただただ泣くばかり…。
仕方なく教室まで担任の先生を呼びに行き、担任の先生の顔を見て安心したのか
ようやく教室へ向かった。
さらに翌日、ランドセルどころかリビングの隅に立ったままてことも動かない…。
この日も昇降口まで先生に迎えに出てもらっったが、「ママ~ママ~!!」
と泣き叫び、先生の手も振りほどいてこちらにかけ出さんばかり…。
「じゃあね!」娘の声を背に、軽く手を振って振り返らずに自宅へ戻った。
4日目の朝、ソファから動かない!
「絶対に行きたくない」と言う。
さすがにこの日は学校を休ませ、ゆっくり話を聞くことにした。
(先生とは給食について話もし、残しても多少目をつぶってもらう事にした)
「本当に給食の時間が嫌で行きたくないの?学校で嫌な事でもあった?」と私。
「ううん、ママと離れたくないだけ…」と娘。

そう、これこそ正しく5月病。
それが証拠に、学校から帰ってくる時は朝の出来事がまるで嘘のように元気に帰ってくる。
これといって理由がないのでまずはほっとし、翌日から頑張って学校行ってみようねと
約束した。
5日目、ランドセルを背負ったものの「行きたくない」。やっぱり涙…。
この涙に負けてはいけない!と「じゃ、登校班の集合場所まで一緒に行ってあげるね」
娘の手を引いて集合場所まで行ったが、「行きたくない」と私の手を離さない。
そばで見ていた息子は「みんなに迷惑かける、行くぞ!」…無理やり引きはがそうとする。
「いや、行きたくない!」と押し問答。
日頃から娘(妹)に厳しい息子は真っ赤な顔で叱咤する。
私は息子の手を取り、「お兄ちゃん、今日は学校まで手をつないでいってあげて!お兄ちゃんが
付いていてくれたら大丈夫だから。」
怒る息子に無理やり娘の手を握らせた。
息子は、泣きながら振り返る娘の手を引くと、登校班の列から遅れて歩きだした。
立ち止まっては何度も娘の顔を覗き込み、何か言い聞かせている…。

そして午後、いつもの通り娘は元気に帰ってきた。
「あのね、お兄ちゃんが学校に着くまで“大丈夫だからな、お兄ちゃんも登校班のみんなも
一緒だから”って何度も言ってくれたよ。昇降口から教室までもずっと付いてきてくれたの…
でね、授業の合間も何度も教室に“大丈夫か?”って来てくれた!」
日頃は優しいというには程遠い、妹には厳しく意地悪ばかりの兄。
親からみても“もう少しお兄ちゃんらしく妹の面倒見てくれたら…”と溜息ばかりなのだが、
妹の窮地を救ったのは他ならぬこの兄だった。
本人も学校から帰るなり、「今日、何回も教室に様子見に行ったけど、あとは泣いてなかった!
大丈夫だったよ」と誇らしげに言った。
以降、あれ程毎朝「行きたくない!」と泣いていた娘の5月病?はピタッと治まった。
今では「お兄ちゃん、遅いから先に行くよ!」と兄をせかして元気に登校している。
妹にとっては、、迎えに出てくれる担任の先生でもなく、優しいパパでもなく、
ましていつも一緒にいる母親の私でもなく、救世主となったのは“お兄ちゃん”
だったのである。
娘ばかりか、親の私達も息子に助けられた。
この日から、気のせいか兄妹の関係も微妙に変わった気がする。
「お兄ちゃんが意地悪する」と訴える娘の言葉も少なくなったし、
二人の会話の中にも表情にも兄への信頼が見てとれる。
私も息子を見る目が変わった。
上辺だけの、娘に接する態度だけで息子の気持ちを判断してはいけないと。
普段は表に出さない息子の心にも、“兄”として妹への愛情がちゃんと育っているんだと。

今日も学校から帰ってくるなり宿題のプリントをめぐって言い争い。
まっいいか、兄妹なんだから…。
そう思えるようになった私が一番救われたのかもしれない。

[2008-05-29 14:49]

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