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使える道具
人間とは不思議なもので、自分を着飾る物や他人の目に触れるところにだけお金をかけてしまいがちだ。
独身の頃の私…というよりごくごく最近までの私もそうだった。
ある時目にしたコラムの、何気ない一言が妙に私を納得させた。
“着飾るものよりも、生活の中で使用する頻度の多いものにほど、お金をかけるべき”。
本当に目からウロコだった。
それから私は、生活の中で毎日使用する物で本当に欲しいもの、あったら便利で楽しくなるようなものは迷わず買う事に決めた。
私の朝は1杯の珈琲から始まる。
朝の珈琲は絶対に外せない。
基本的に夏でも温かい飲み物しか飲まないのだが、中でも珈琲は一日にかなりの頻度で飲む。
だが、以前は珈琲はどちらかというと嫌いな方だった。
嫌いな珈琲が180度逆転したのは出産してから…。
出産すると体質が変わったり、食べ物の好みが変わったりする事があるというが、私もまさしくそれで
出産後復帰した時に、会社のC嬢に「○ちゃん、いつからコーヒー飲めるようになったの!!」
と言われたのを鮮明に覚えている。
毎日飲むからと言って、特別こだわった飲み方をする訳ではない。
昔からの三角のドリッパーに1人分の珈琲の粉を入れ、ゆっくりとお湯を回して少し濃いめの珈琲を飲む。
コーヒーメーカーなどで入れている時間が勿体無いからだ。
それでもお気に入りの珈琲の粉で入れば十分満足していた。
ふと立ち寄ったインテリアショップでそれを見つけるまでは…。
それは何万円もするドリッパーではなく、420円で買える手動のドリッパーだった。
HARIOという知る人ぞ知るメーカーのドリッパーは、今までとどこが違うかというと、形が円すいで穴は大きな真ん中の1つのみ。
円すい形の中にはうずが出来るように、真中に向かって溝がついている。
説明書には、お湯が中心に向かって流れる事により珈琲の粉に触れる時間が長くなり、珈琲の成分がより多く抽出されるとある。
“まずは試しに珈琲を入れて飲んでみてください。
違いがすぐ分かります!”とお店のコピーがついていた。
グットデザイン賞のシールが付いていた事もあり、その形が何とも美しく見え、その日迷わずこのドリッパーを購入した。
早速自宅で1杯入れてみる。
驚いた!
“珈琲の粉を変えたんだっけ?”と自問自答する程いつもの珈琲の香りが違う!
まったりとした味も全然いつもと違う!
このドリッパーにかかると、珈琲の粉の違いもよく分かる香りがよく出るので、モカならモカ、ブルマンならブルマングァテマラならグァテマラ、それぞれの特徴がはっきりと
分かるのだ。
420円で1万円以上のドリッパーを購入した気分になった。
それからは、たった数分の朝の珈琲タイムも楽しみになった。
ただ1つ、大変なのはペーパーフィルターも円すい形であること。
これがなかなかそんじょそこらに売っていない!
今日もドリッパーは同じものを見つけたが、ペーパーフィルターは売っていなかった!
インテリアショップでも売り切れ…。
日に何度も飲んでいたら、あっという間にフィルターは無くなってしまうだろう。
見つけた時のまとめ買いは避けられない。
こだわりの道具にはこだわりの消耗品が必要だった?
それでも…私はこの420円の道具をこよなく愛している。
明日も迷わずこの円すいのドリッパーで入れた珈琲で目を覚ます事だろう。
[2009-02-01 14:04]