介護
笑顔が印象的な元女優が自殺した。
原因は介護疲れ…という。
現代を象徴するようなこのニュースは連日テレビで論議になった。
“介護疲れ”ではないが、多少私にも経験がある。
今から13年前の事である。
当時、結婚したばかりの私は、会社近くのアパートで夫と二人暮らしをしており、週末には夫の実家に顔を出す…というような暮らしをしていた。
新婚の二人暮らしはあっけなく終わりを迎えた。
夫の父がガンで闘病中に2度脳梗塞になり、付き添いが必要になった為だ。
夫の母は病院に付きっきりになったので、自宅が常に留守になり、飼っているいる犬の世話も必要になった。夫の実家での生活が長くなり、結局、家族で相談する間もなく
アパートを解約せざるを得なかった。
行きがかり上、夫の両親の家へ同居する事となった私は、仕事が終わると病院へ向かい、付き添いの夫の母と交代をする。
夫の母は自宅へ戻り、仮眠をし、入浴や食事を済ませてまた病院へ戻る。
その間、私も夫の父の面倒は食事から下の世話まで何でもした。
年齢よりもずっと若く、背筋がピンと伸びて矍鑠(かくしゃく)とした父だったが、脳梗塞の後はまるで別人になった。
それは夫の印象的な言葉でもよく分かる。
夫の父がその後亡くなった時に涙を見せなかった夫は、理由を聞いた私に、“自分の知る父親は脳梗塞になった時にもう死んだと思った”と言ったのだ。
実際、脳梗塞後の夫の父は本当にダダっこのようだった。
子供のようにわがままを言い、思うようにならないとすぐ怒り、他人の話に耳を貸さない。
手のかかる幼児と同じ。
私は他人だからまだ良かったが、夫や夫の母の心中はいかばかりだったろう。
家族全員で協力する事が出来たとしても、介護をするのは大変だ。
それが協力者がなく、1対1で全てをみなくてはならないとしたらなおのこと…。
介護の特集が組まれた番組を目にするたび、我が家でも夫婦の間で話題になる。
「まだ早い?」そんな事はない。
認知症も若年層が増えている。
誰もが明日は我が身…と真剣に考える時期にきていると思う。
[2009-04-30 13:53]